「端からメールしろ」は時間の無駄?エクセル頼りの海外営業が陥る罠
「この500社のリストの中で、いま現在も確実に『輸入事業』を継続している企業はどれくらいあるか、把握されていますか?」 先週、オンライン面談である中堅メーカーの海外新規事業担当者の方と画面を共有していたときのことです。画面には、何年もかけて展示会やウェブ検索で集められた、海外バイヤーのリストがエクセルでびっしりと表示さ...
「端からメールしろ」は時間の無駄?エクセル頼りの海外営業が陥る罠
「この500社のリストの中で、いま現在も確実に『輸入事業』を継続している企業はどれくらいあるか、把握されていますか?」
先週、オンライン面談である中堅メーカーの海外営業担当者の方と画面を共有していたときのことです。画面には、何年もかけて展示会やウェブ検索でバイヤー発掘を行い集められたリストが、エクセルでびっしりと表示されていました。
会社名、国、担当者名、メールアドレス。 丁寧にセルが埋められているものの、一番右側にある「最終コンタクト日」の列は、多くの行で2年前や3年前の日付のまま止まっています。
「正直なところ、半分以上はもう担当者が変わっているか、会社自体がどうなっているか分かりません。でも、上司からは『まずはこのリストに端からアプローチしろ』と言われていまして……」
画面越しの苦笑いに、私は強く共感しました。 エクセルでバイヤーリストを管理し、そこに一斉にコールドメールを送る。日本の多くの企業で長年続けられてきた、非常に真面目で地道な海外営業の姿です。
しかし、データを整理していて、ふと気づいたことがあります。
私たちが「いいバイヤー」を探すために費やしている時間の多くは、実はすでに死んでいるデータとの格闘に消えているのではないか、ということです。
エクセルの行が増えるほど、海外進出の見えないリスクも増えていく
海外ビジネスにおいて、海外進出に向けた新しい市場の開拓は常に手探りの連続です。 どこに売ればいいか分からない状態からスタートし、展示会に出展したり、JETROのビジネスマッチングを活用したりしながら、少しずつ名刺を集めていきます。
集まった情報は、会社の共有サーバーにある「海外バイヤー候補_最新版.xlsx」といったファイルに追記されていきます。行数が増えるたびに、営業部全体に「見込み客が増えている」という安心感が生まれます。
ですが、エクセルという静的なツールには、致命的な弱点があります。 それは、入力したその瞬間から情報の鮮度が急速に落ちていくという事実です。
国内の取引先であれば、業界の噂やニュース、あるいはちょっとした訪問で相手企業の状況を察知することができます。しかし、相手が海を越えた異国の企業となると、そうはいきません。
数年前に名刺交換をした購買担当者は、すでに競合他社へ転職しているかもしれません。 コロナ禍を経て事業を縮小し、輸入ビジネスから撤退している可能性もあります。 もっと深刻なケースでは、経営状態が悪化し、代金の支払い遅延が常態化している企業になっていることすらあります。
私たちは、リストの行数を増やすことに意識を奪われがちですが、本当に目を向けるべきは「その企業が現在進行形で安全な取引相手なのか」という点です。
「売れそうな相手」の前に「安全な相手」を探せているか
JETRO(日本貿易振興機構)が毎年発表している「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」のデータを見てみると、海外進出における最大の課題として、常に「新規取引先の開拓」つまりバイヤー発掘が上位に挙がります。
しかし、それと同時に注目すべきは、輸出ビジネスにおいて多くの企業が「取引先の信用不安」や「代金回収のリスク」に直面しているという事実です。
「最初のサンプル注文まではスムーズだったのに、本番のコンテナ発注の段階で急に連絡が途絶えた」 「条件交渉の末に商品を発送したが、支払いが数ヶ月遅れてキャッシュフローを圧迫した」
私たちが日々さまざまな輸出企業の方々からご相談を受ける中で、こうした生々しい声は決して珍しくありません。
なぜ、このようなトラブルが起きるのでしょうか。 それは、アプローチの入り口で「いいバイヤー(買ってくれそうな相手)」を探すことばかりに注力し、「安全なバイヤー(支払い能力があり、事業が安定している相手)」かどうかのスクリーニングが抜け落ちているからです。
従来の海外営業のやり方では、相手の信用調査を行うのは「商談が進んで契約の一歩手前になってから」というケースがほとんどでした。 外部の信用調査機関に依頼すれば、1件あたり数万円のコストと数週間の時間がかかります。エクセルにある数百件のリストすべてに調査をかけることなど、到底不可能です。
だからこそ、誰もが「とりあえずコールドメールを送ってみて、反応があった企業とだけ話を進めよう」という確率論に頼らざるを得ませんでした。
しかし、その「とりあえずのアプローチ」が、担当者の貴重な時間と労力を奪い、時には大きなリスクを抱え込む原因になっているのです。
韓国のスタートアップが日本市場を見ていると、ある違いが見えてきます
ここで少し視点を変えてみたいと思います。
私はRindaの日本市場デスクとして、韓国の輸出企業やスタートアップが日本、あるいはグローバル市場へ海外進出する際のサポートを行っています。 彼らの動きを内側から観察していると、日本企業の海外営業との間に、ある決定的な「時間配分の違い」があることに気づきます。
日本の多くの営業担当者は、リストを「作る」ことと、そこに手作業で「アプローチする」ことに膨大な時間を割いています。
一方、私たちが支援している韓国の企業、特にグローバル展開に慣れたスタートアップたちは、リストの作成自体にはほとんど時間をかけません。彼らがリソースを集中させるのは、営業自動化を前提としたリストに対する「自動的な検証」です。
彼らは、世界中の企業データベースからAIを使って条件に合う企業を一瞬で抽出し、そこからさらに「過去半年以内に類似商品の輸入履歴があるか」「ウェブサイトは頻繁に更新されているか」「ネガティブな財務情報はないか」といった動的なデータを掛け合わせてスクリーニングを行います。
Rindaプラットフォームの内部データを見ても、成功している企業ほど、この初期のフィルタリングを厳格に行っています。 彼らにとって、エクセルに何千件のデータがあるかは重要ではありません。いま現在アクティブで、かつリスクの低い「数百件の純度の高いリスト」をシステム上で維持し、営業自動化の基盤を作ることに価値を置いているのです。
この違いは、単なるツールの差ではありません。 「情報は常に変化するものであり、人間の手で管理できる限界を超えている」という前提に立っているかどうかの差なのです。
リスクを排除し、コールドメールの威力を解放する
リストの純度が低い状態、つまり「誰が安全で、誰が本当に求めているか分からない状態」で一斉にメールを送るから、反応が得られないのです。
最近、「コールドメールを送っても全く返信が来ない。もう古い手法なのではないか」という相談を続けて受けました。 しかし、私たちのデータが示している真実は逆です。コールドメールは決して死んでいません。むしろ、正しい相手に、正しい文脈で届ければ、これほど強力なアウトバウンド手法は他にありません。
読まれないのは手法のせいではなく、宛先となっているリストの「鮮度」と「安全性」が致命的に欠けているからです。
2026年を見据えた海外営業において、私たちはエクセルでの静的な管理を捨て、データ駆動型のアプローチへ移行する必要があります。 私たちが提唱しているのは、人間の手作業をAIが代替する営業の自動運転4ステップというフレームワークです。
ステップ1:動的データの取得と同期
年に数回しか更新されない自社リストではなく、常にクローリングされて最新の状態が保たれるデータベースを主軸に置きます。企業の統合、担当者の異動、新たな展示会への出展履歴など、世界中で日々更新される情報をシステムが自動で取得し、バイヤー発掘を継続的に行います。
ステップ2:セキュリティ&リスクのスクリーニング
ここが最も重要です。単に「食品を扱っているバイヤー」を探すのではなく、「過去3年間に継続的な輸入実績があり、かつ不渡りや深刻な法的トラブルの記録が見当たらない」企業だけを抽出します。 AIが公開情報や貿易データを横断的に分析することで、人間が手作業で行えば数ヶ月かかる与信の一次スクリーニングを瞬時に終わらせます。
ステップ3:文脈に沿ったコールドメールの自動配信
安全でアクティブなバイヤーのリストが完成したら、次はその企業の「現在の関心事」に合わせたメッセージを作成します。 「御社が先月の展示会で〇〇の分野に注力されていると拝見し〜」といった個別の文脈をAIが生成し、最適なタイミングでコールドメールを送信します。定型文のスパムとは全く異なる、質の高い1to1のコミュニケーションです。
ステップ4:反応データの学習と次へのフィードバック
メールの開封状況、リンクのクリック、返信の有無。これらの行動データをAIが蓄積し、「どの国・どの規模の企業が、どんな提案に反応しやすいか」を学習します。 このサイクルを回すことで、次に抽出されるリストの精度はさらに向上し、営業自動化の真の価値が発揮されます。
実際の現場で起きている営業自動化による「主語の変化」
このアプローチを取り入れた企業では、日常の風景が劇的に変わります。
私たちがサポートしている、ある日本の消費財メーカーの海外営業担当者(社内では親しみを込めて「タカハシさん」と呼ばせていただいています)の事例をご紹介します。 彼は以前、毎週金曜日の午後を丸々使って、海外の問い合わせフォームからコールドメールを送信し、その結果をエクセルに手入力して転記する作業に追われていました。返信率は0.5%にも満たず、返信があっても実体のないブローカーのような企業ばかりだったと言います。
彼がチームとともに海外営業AIエージェントを導入し、エクセル管理を手放してから数ヶ月後。 彼の日報から「リスト作成」や「手動でのメール送信」という文字は消えました。
その代わり、システムが自動でスクリーニングし、安全性を確認した上でアプローチした企業からの返信に対して、具体的な商談の準備をすることに時間が使われるようになりました。 実数値としても、ターゲットを絞り込んだことによる開封率は45%を超え、有効な商談化率は以前の約6倍に跳ね上がりました。
何より彼が喜んでいたのは、「怪しい企業との不毛なやり取りに神経をすり減らすことがなくなった」という精神的な余裕でした。
2026年の海外営業は、誰を主語にするのか
海外進出は、企業の未来を創る素晴らしい挑戦です。 しかし、その最前線に立つ営業担当者が、情報の古いエクセルファイルと睨み合い、安全かどうかも分からないリストに祈るようにメールを送り続ける日々は、もう終わりにすべきです。
ツールを変えるのではありません。主語を変えるのです。 膨大なデータの収集を通じたバイヤー発掘や、リスクのスクリーニング、最初のアプローチといった「作業」の主語は、AIエージェントによる営業自動化に任せましょう。 そして私たち人間は、その安全な土台の上で、バイヤーとの**「商談」と「関係構築」に専念する**のです。それが本来のビジネスの醍醐味であるはずです。
あなたのパソコンの中にある、そのバイヤーリスト。 一番右側の「最終コンタクト日」は、いつになっていますか? そして、その中にいる企業たちは今、本当に安全な取引相手だと言い切れるでしょうか。
データに基づいた新しい海外営業の形について、もし少しでも引っかかるものがあれば、ぜひご自身の今の状況と照らし合わせてみてください。 現場での小さな違和感こそが、大きな変化の始まりになります。
お悩みや、現場で感じているエクセルの限界があれば、コメントにて気軽に教えてください。他の読者の方々のヒントにもなるはずです。
もし、自社のリストを一度システムで整理し、海外営業AIエージェントがどのように動くのかを具体的に見てみたい方は、下のリンクから静かに覗いてみてください。
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