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AI商社がやってくる — なぜ「輸出代行フィー」の市場が再編されるのか

先月、東京ビッグサイトで開催されたライフスタイル系の国際展示会でのことです。 私がブースで、韓国企業の日本市場へのアプローチ手法についてご案内していたところ、関西から来場された中堅消費財メーカーの海外営業課長から、少し切実なトーンでこんな質問を受けました。 「最近、ドン・キホーテやロフトに行くと韓国コスメばかりじゃない...

GRINDA AI
2026. 7. 28.
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AI商社がやってくる — なぜ「輸出代行フィー」の市場が再編されるのか

2026年、フロンティアAIラボが揃って「ソフトウェアを売る会社」から降りてきました。彼らが選んだのは、受託とサービスでした。この動きは、日本の商社機能にとって他人事ではありません。

  1. まず、AI業界で起きた3つの出来事

議論の出発点として、私たちの製品の話は一旦脇に置きます。先に、2026年前半に起きた事実を3つ並べます。いずれも一次情報が公開されています。

① OpenAI が「導入会社」を別法人で立ち上げた

2026年5月、OpenAI は The OpenAI Deployment Company(DeployCo) を設立しました。モデルのAPIを売るのではなく、Forward Deployed Engineer(FDE)と呼ばれるエンジニアを顧客企業の内部に常駐させ、業務プロセスそのものを再設計する事業体です。初期投資は40億ドル超、TPG、ゴールドマン・サックス、ソフトバンク、そしてマッキンゼーやベイン、キャップジェミニといったコンサルティングファームまでが出資に名を連ねました。同時に、英国のAI導入コンサルティング会社 Tomoro を買収し、約150名のFDEを初日から確保しています。

一次出典:OpenAI launches the OpenAI Deployment Company 事業説明:The OpenAI Deployment Company ② Anthropic は PE と組んで実装専業会社をつくった

その数日前、Anthropic も Ode with Anthropic を公表しました。ブラックストーン、ヘルマン&フリードマン、ゴールドマン・サックスらとの15億ドル規模のジョイントベンチャーです。買収した Fractional AI を土台に、約100名のエンジニアが顧客企業の中に入り、コア業務を作り替える。構想の出発点はブラックストーン側にあり、自社ポートフォリオ企業にAIを入れようとしたときに、大手コンサルにも小規模ブティックにも埋められない隙間があると気づいたことがきっかけだったと報じられています。

一次出典:TechCrunch: Anthropic, Blackstone bet the next trillion-dollar AI business is implementation, not just models 併せて:CNBC ③ Sierra は「席数」ではなく「成果」に値段をつけた

課金モデルの側でも同じ方向の変化が起きています。Bret Taylor 率いる Sierra は、シート課金でもメッセージ課金でもなく、エージェントが実際に解決した案件ごとに課金する成果報酬モデルを採用しました。エスカレーションされた案件は原則として課金対象外、何をもって「成果」とするかは契約前に定義する、という設計です。第三者集計では1件あたりおおむね1.5ドル前後とされ、この課金構造のままARRを1年で倍増させています。

一次出典:Sierra: Outcome-based pricing for AI Agents 2. 3つの事実に共通している一本の線

別々のニュースに見えますが、構造は同じです。

AI企業が、ライセンス料ではなく「実行の対価」を取り始めた。

ソフトウェアを納品して終わりにせず、顧客の業務の中に人とシステムを置き、結果に対して課金する。これは新しい発明ではありません。むしろ、商社が100年以上やってきた課金構造そのものです。

商社の口銭は、モノの製造原価に対する対価ではありません。「相手を見つけてきた」「与信を担保した」「面倒な実務を代行した」ことへの対価です。AI業界が2026年にたどり着いたのは、まさにこの結論でした。ソフトを売るより、実行を売るほうが、顧客の予算にとって説明がつきやすい。

つまり、いま起きているのは「AIが商社になっている」という現象です。だとすれば、逆方向の問いが成立します — 商社機能のほうは、どこまでAIに置き換わるのか。

  1. 総合商社の機能を分解してみる

総合商社の輸出支援機能を粗く分けると、だいたい次の4層になります。

層 機能 何で成立しているか A. 探索 相手国のバイヤー発掘、市場性の判断 情報の非対称性 B. 接触 初期アプローチ、言語対応、関係構築 人的ネットワークと言語能力 C. 与信・金融 信用補完、L/C、為替、ファイナンス バランスシートと信用 D. 実務 通関、物流、書類、規制対応 免許と現場オペレーション

このうち、A と B は、生成AIによって限界費用が劇的に下がった領域です。数万社規模のバイヤー候補を国別に洗い出し、6言語で個別最適化した接触を回し、返信を分類して温度を判定する — これは2023年には人月コストの塊でしたが、2026年にはソフトウェアの仕事になりました。

一方で、C と D は下がっていません。 与信は誰かがバランスシートで背負う必要があり、通関は免許業務です。AIが安くしたのは判断の前工程であって、責任の引き受けではありません。

ここが本稿でいちばん強調したい点です。商社は消えません。商社の中で、単価の説明がつかなくなる層だけが移動します。

  1. 日本の輸出代行フィーは、いま何に対して払われているか

日本で中小メーカーが海外販路をつくるとき、費用は概ね次のように分かれます。

まず、日本国内で公開されている営業代行の相場を並べます。

費目 実勢レンジ 性質 営業代行(固定報酬型) 担当者1名あたり 月50〜60万円 稼働に対する固定費 テレアポ特化(固定報酬型) 月20〜30万円 同上 テレアポ特化(成果報酬型) アポ1件 1.5〜3万円 行為あたり課金 インサイド〜フィールド一気通貫 月50〜150万円、または受注額の10〜30% 混合

出典:PRONIアイミツ「営業代行の平均費用と料金相場」、cocorobi「営業代行の費用相場【2026年版】」

海外案件になると、ここに現地人件費・渡航費が上乗せされます。加えて、対象地域で対応できる代行会社の数そのものが単価を左右する構造があり、アジア圏に比べて中東・アフリカは対応可能な事業者が限られるため希少性で費用が上がると説明されています。

そして、海外販路をつくる手段ごとに「何にお金を払っているか」を整理すると、こうなります。

手段 コストの形 顧客接点の所有 海外営業代行 月額固定+成果報酬 自社が保持 現地代理店(ディストリビューター) 販売マージン 代理店側に寄る 商社 仕切り価格(買取差益) 最も遠くなる

出典:Link Global「海外営業代行とは?」

この3つは、コストの形は違っても、買っているものは同じです。「探索」と「接触」を誰かに代わってもらう対価です。

注目すべきは、リテーナーと成功報酬の予算枠です。この枠は、経理上「販売促進費」や「支払手数料」であって、「ソフトウェア利用料」ではありません。金額の桁も一つ違います。月数万円のSaaS予算と、月数十万円の営業代行予算は、そもそも決裁ラインが別です。

そして、この予算枠で買われているものの実体は、先ほどのA層とB層 — つまり、AIの限界費用がすでに下がりきった領域です。

  1. RINDA の立ち位置:マネージドAI商社

私たちが RINDA を「AI営業ツール」と呼ばず、マネージドAI商社と呼んでいるのは、この構造判断によります。

RINDA は、ウェブサイトのURLを1つ渡すだけで、

相手国のバイヤー候補を探索し(A層) 各社の文脈に合わせた多言語アプローチを設計・実行し(B層) 返信を分類し、温度の高いものだけを人間に引き渡す

という一連の流れを自律的に回します。ここまでは、従来なら海外営業担当か商社の担当者が担っていた工程です。

一方で、C層とD層には手を出しません。 与信も、通関も、物流も、既存のプレイヤーのほうが圧倒的に強い。私たちはそこを取りに行くのではなく、A・B層を機械の単価まで引き下げることで、C・D層に払える予算を企業内に残すという設計を選んでいます。

実測値を出します

数字を出さずに「安い」と書くのはフェアではないので、自社の運用実績を並べます。

運用実績(2026年4月時点、累計)

指標 実測値 累計送信数 130,975通 返信数 2,738件 有効商談 600件超 有料顧客 42社(2026年7月時点) 有料解約率 10.2% キャンペーン反復実行率 82%

料金(実績ARPU)

プラン 月額 想定ユーザー ベーシック 35万ウォン(約4万円) 初めての輸出 パートナーズ 150万ウォン(約16万円) 複数国・複数品目 エンタープライズ 年4億ウォン規模(約4,300万円) 機関・支援団体 成功報酬 成約額の5% 上記に任意付加(4社で契約実績)

年間コストで横に並べる

チャネル 年間コスト(概算) 得られるもの 海外営業担当1名を採用 5,000万ウォン〜(約540万円〜) 属人的な稼働。立ち上がりに数ヶ月 日本の営業代行(固定報酬型・1名分) 600〜720万円 稼働時間 バイヤーマッチング代行の最上位商品(韓国・輸出バウチャー) 2,000万ウォン(約215万円)/単発 リスト+検証+商談設定。継続なし RINDA ベーシック 420万ウォン(約45万円) 発掘〜接触〜返信分類を通年で継続運用

為替は1円≒9.3ウォンでの概算です。

数字の定義について、先に断っておきます。

上記の「返信2,738件」には、不在応答や自動返信が含まれます。自社で6,076行の実データを精査したところ、**人間による実質的な返信は全体のおよそ27%**でした。この記事で意味があるのは「有効商談600件超」のほうで、返信数を成果指標として読むべきではないと考えています。

業界全体で「返信率」の定義が曖昧なまま比較されているのは事実で、私たちも一度そこで自社データを読み違えました。だから定義を先に書きます。

送信1通 = 実際に配信された個別メール1通(バウンス除く) 返信1件 = 受信した応答すべて(自動返信含む/指標としては使わない) 有効商談1件 = 双方が日程調整に合意し、実際に実施された商談

この比較表が意味を持つのは、金額の大小ではありません。「1件あたりいくら」という同じ物差しで、AIと人間の営業チャネルを初めて横に並べられるという点です。

そして課金の軸に注目してください。日本の営業代行の成果報酬は受注額の10〜30%、商社の口銭も取引額比例です。RINDA の成功報酬は成約額の5%。同じ「成果に対する手数料」という軸の上に乗りながら、率が一桁違う。これは私たちが安売りしているからではなく、探索と接触の限界費用が実際に下がったからです。

稟議で問われるのは「このソフトは必要か」ではなく「この手数料率は妥当か」になります。後者のほうが、決裁は通りやすい。すでに払っている費目だからです。

  1. 誤解されたくないこと:これは「代替」ではなく「再配置」です

最後に、はっきり書いておきます。

この記事は、商社不要論でも、通関業者不要論でもありません。むしろ逆です。

総合商社が長く担ってきた機能のうち、探索と初期接触は、情報の非対称性が利益の源泉だったから高く売れていました。その非対称性が縮んだいま、同じ工程に同じ単価をつけ続けることは、買い手にとっても売り手にとっても健全ではありません。

一方、与信・金融・現場実務は、AIによって価値が下がるどころか、むしろ相対的に希少になります。 前工程が自動化されて商談の絶対数が増えれば、その先を捌ける専門機能への需要は増えるからです。

だから私たちは、商社やフォワーダー、通関業者を競合とは考えていません。RINDA が上流で商談を量産し、その先の実行を既存プレイヤーが担う — その分業のほうが、双方にとって取り分が大きい。実際、私たちが最も良い成果を出しているのは、社内に貿易実務の知見がある企業と組んだときです。

AI商社は、商社を置き換えるのではなく、商社の中で最も単価の説明が難しくなった層を引き受けます。

その先の交渉、与信、通関、そして最後の握手は、これからも人間の仕事です。

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